筆記具 No.35 ぺんてる オレンズネロ PP3002/3003

ええと…すっかりご無沙汰しています…。
ブログ移転後の最初の筆記具紹介記事はこちら。ぺんてるからオレンズネロです。今年2月に発売され、大きな話題となったことが記憶に新しいですよね。

「折れない」機構で人気のオレンズシリーズからのハイエンドモデル・定価3000円・ノック不要…。話題づくりの効果もあってか、発売直後から品切れが相次ぎ、発売から半年が経過した8月現在も購入できない状態が続いているようです。…管理人も4月頃、ようやくの購入と相成りました。

それでは。

〔Pentel orenznero PP3003〕

■外箱

ー多方で散々紹介され尽くしているとは思いますが、当ブログでは初めてとなる3000円超え製品の記事。折角なので外箱から見ていくことにします。

価格が価格とあって、いつものブリスターパックではなくオリジナルの凝ったパッケージング。紙箱ではあるものの、マット処理がなされているため決して安っぽくは見えません。(ただ、少しベタつくので経年劣化が不安な所です。)

表面にはデザイン・設計を表現した図がびっしりと印字してあり、正に男の子心をくすぐる見た目になっています。全般的に共通パッケージ化や裸売り化が進行する中、ここまで力を入れてくるとは…この商品への力の入れ具合がうかがえますね。

ーこの外装や専用ホームページ(外部サイト)を見るに、オレンズネロは技術者の思いが非常に色濃く反映されている印象を受けました。


外箱から中身を出すと、プラスチックのトレーに固定された本体と、1枚紙を折りたたんだ取扱説明書(兼保証書)の二点が出てきます。外箱の凝りようから一転、あっさり仕様。
必要な部分にコストを回している…といった所でしょうか。ま、正直この辺りはちょっと安っぽいかなと。

さて、外箱の話はそこそこに、本体に参りましょう。

■外観
黒軸、12角、ロンググリップ。ー端的に特徴を言い表すとしたらこんな感じでしょうか。3000円もする筆記具にして珍しく装飾要素は無く、道具然とした感じです。(強いて言えば中央部のくびれがそれといえるでしょうか)

素材は前軸がナイロン+鉄、後軸がABS樹脂。
前軸に特殊素材を採用!という点が一つの売りのようですが、金属っぽさという点では希薄で、「カッチリした」感じがあまりしないのが残念です。(メーカーの説明に樹脂に金属粉を混ぜた、とあり、あくまで樹脂主体であることがわかります)

もちろん、何がなんでも金属を採用する必要は無いとは思いますが、塗装面(後述)や耐久性の面では不安が生じますね…。

それでは以下、各部分を詳しく見ていきます。

■後軸

後軸は後ろに向かうに従って細くなっていく、12角形状です。2面分をえぐるようにして面取り加工がなされ、orenzロゴと品番、芯径が印字。凝ってますよね。流石3000円もするだけあります。

ロゴと型番は控えめなグレーの印字、芯径はゴールド(0.2)/シルバー(0.3)の印字になっています。芯径表示だけ丸みを帯びたフォントになっていて、少々浮いているような…。オレンズネロのソリッドな感じとはあまり似合わない気がするんですが…どうでしょうか。

(耐久面では普通に使っている感じではロゴが剥げることもなく、問題は特になさそうです)

そうそう、「nero」が印字されていないのはあくまで「オレンズ」シリーズの一つという扱いだから。…という話を聞きました。
(余談ですが、「ネロ」はイタリア語で黒を意味するそうです。オレンズと併せて回文になることから付けられたのだと思いますが、よく考えられてますよね)

さてここで一つ、どうも気になる点が。

横から平行に見てみると分かるんですが、印字がビミョ~に傾いているんです。(「orenz」と「Pentel PP3003」がそれぞれちょっと右上がりに。)
写真で見てもなんとなく分かるぐらいですので、実物を見るとはっきりと分かるレベルです。
これが稀に…という訳では無く、結構見かけるんですよね。酷いものだと、ロゴがはみ出て切れてしまっている物もあるようで…。

個体差なんでしょうけれど、これはちょっといただけないですね…。多くの店舗では空箱方式での販売ですし、購入前に中身を確認する、なんてことが難しい場合も多いでしょう。3000円もする製品ですし、どうにかならないかな…と思う所です。

さて、気を取り直して消しゴム・キャップ周りです。

円筒状のキャップは硬度窓や天冠部の芯径表示等も無くあっさりとした印象を受けますが、さりげに面取り加工がなされており、細部へのこだわりを感じられます。

消しゴムは白色の標準タイプ。クリーナーピンは無し。3000円台の製品でも針無しと、とうとうここまで来てしまったという感がありますが、時代の流れなのでしょうね。昔ほど芯が詰まりにくくなった、というのもあるのでしょう。
今時デフォルトでクリーナーピンを付属させるのは、パイロットとオートぐらいかもしれません。
ちなみに替えゴムは「PPE-2」となっていますが、これは最初に付属している消しゴムとやや形状がことなる(針付属・やや短め)ので注意です。

クリップはスマッシュと同じもの。オレンズネロの全長に対してやや短い気もしますが、手に当たらない・後ろへの重心要素が少なくなる、等メリットもあり、実用上も特に問題ありません。ただ、くぼみにガッチリハマっているため取り外すのは難しいです。

■前軸

さて続いて前軸部分。こちらも軸は12角状ですが、後軸のような絞りはなくストレートな円筒状。前側全体に輪状の彫り込みを入れてグリップとしています。

1000円モデルのオレンズ(オレンズ メタルグリップ)もそこそこ長いグリップでしたが、こちらはそこからさらに長くなっており(5.3cmほど)、筆記時にグリップの後ろ部分が手にあたって気になる場合がありそうです。
デザイン面からこうなったと考えられますが、もうちょっと短くても良かったような~。

…そんな前軸は前述の通り、鉄+ナイロンの特殊仕様。…なんですが金属感は無く、後軸…つまりABS樹脂の質感とさほど変わりません。ただ、鉄が混ぜされているからかその手触りに対してやや重く、重心配分もやや前側よりとなっています。

個人の感覚ではあるものの、「低重心!」というような過度に主張をするようなものでは無く、あくまでも丁度良い具合なのかな、と。(これが狙いだったのかもしれません)

前軸と後軸のつなぎ目は一回り細く、”Pentel”の彫込がなされています。
ここがどういった素材なのかは公表されていないですが、傷が出来ても塗装落ちしていない点からABS樹脂では無いか、と管理人は考えています。(どちらでも、さほど変わらないんですけどね)

この窪みもロンググリップの後ろ部分と同様、持ち方によっては手に引っかかって気になることがあります。…と言うよりも、管理人は気になりました。問題点とすることでは無いかもしれませんが、欲を言えばシームレスな造りにして欲しかったところです。

口金は取付面と3つのカーブを組み合わせた4段仕様。ガイドパイプは3mmと今までのオレンズ同様視界良好です。
また、ガイドパイプはノックボタンを押しながら押し付けることで引っ込ませることが可能です。(但し完全に収納することはできないため、過信は禁物です)

口金を外すと先端・外軸・中軸の3つに分解できます。ここは特に特筆すべき点は無いかな…と思っていたんですが、よくよく考えるとネジ山が口金側ってかなり珍しいですよね。オートマチック機構を仕込むスペースを空けるため、もしくは外軸の構造の簡易化が理由として考えられますが…真意は不明です。

オレンズネロの「核」となる内軸の先端・チャック部は金属3重構造。思いの外樹脂パーツが多くてびっくりですが、実用上は特に問題なさそうです。ただ、耐久面はちょっと心配です。(もっとも、こればっかりは長期間使用しないとなんとも言えませんが…)

極小の金属2分割チャックの奥にはボールチャック用の金属球が入っているはずです。が、これ以上の分解が不可能なため見ることは出来ませんでした。ブラックボックスです。

さて、冒頭の方でお話した「塗装」についてです。
オレンズネロの前軸が特殊素材であるのは既知の通りですが、この素材、塗装の乗り具合に少々難があるようなんです。

ネロの名の通り黒い軸となっている本品ですが、どうも前軸はグレー系の素材に黒い塗装を施しているようなんですね。単にそれだけなら特に問題ないんですが、塗装乗りが悪いのか非常に剥げやすいんです。ABS樹脂の後軸は元が黒いので傷がついても問題ないんですが、こちらは傷がつくとガンガン剥げていってしまう勢いで…。

元が真鍮であれば剥げても地の金属が光り見栄えがするんですが、こちらは剥げると薄いグレーが露出してしまい、なんとも残念な感じに…。

塗装の剥げに関しては防ぎようが無いので仕方ない所ではありますが、「う~ん」と首を傾げることになりそうです。

■自動芯出し機構

オレンズネロ(2017年発売)とテクノマチック(1982年発売) どちらも3000円(税抜)

オレンズネロの自動芯出し機構・オレンズシステムについては既に散々語り尽くされていることかと思いますので、機構云々についてはあっさり気味でのご紹介で。

オレンズネロ最大の売りであるのが、プロッターの技術を応用した「自動芯出し(オートマチック)機構」とガイドパイプの先端を滑らかに仕上げることで引っかかりを低減する「オレンズシステム」の組み合わせ、即ち「ワンノックで折れずに書き続けること」ができることです。

オートマチック機構はパイプを筆記面に押し付ける必要があるため、金属と紙面による摩擦が生じてどうしても書き心地が悪くなってしまいます。その難点を、本品はぺんてる持ち前の「オレンズシステム」…もとい先端を滑らかに加工したパイプを搭載することで、筆記時の「違和感」を低減することに成功しています。

2つの機能は非常に相性が良く、ある意味この組み合わせが生まれたのは必然と言えるかもしれませんね。0.5mmや0.7mmなど、他の芯径でもぜひ…そして欲を言えば同ぺんてるのテクノマチックのような「先端プッシュ機構」をひっさげて…なんて夢を見すぎでしょうか。

ぺんてる”TECHNOCLIC(テクノクリック)” 1983年発売  芯径こそ違うものの、仕組みはオレンズネロとほぼ同じです。

シャープペンシルにおけるオートマチック機構自体はかなり昔から存在していました。が、その多くは0.5mm径、もしくはそれ以上の芯径でのものであり、0.3mm以下で採用されたものはほとんどありませんでした。(管理人が知る限りではパイロットのオートマチックぐらいです)
それを今回、ぺんてるは一気に0.2mmまで実現させてしまったのだから、流石としか言いようが無いですね。ボールチャック技術と過去の実績があったぺんてるならではです。

■使用感
きつくない低重心・きつくないグリップのお陰で、誰でも扱いやすいような作りになっていると思います。近年よく見かけるような下手に製図用チックなものよりも、こちらのほうが良いかもしれません。

書き心地に関しては、オートマチックを使用するとどうしても普通のシャープペンに見劣りしてしまいますが、十分実用的な範囲かと思います。3000円だからと言って1000円のシャープペンの3倍書きやすいわけではありませんが、機能込みで考えればよく出来ていると思います。ガタツキも良く抑えられており、もしかしたら言われないと気が付かないレベルかもしれません。

…ただその一方でどうしても気になってしまうことも。それは「濃さ」が低下すること。つまり描線の黒さへの影響です。
オレンズネロは通常のオレンズと異なり、芯を出そうとするパイプの力が筆記する際の圧力と逆向きに働きます。すると普段より紙面と芯に加わる力が弱まり、結果として描線が薄くなってしまうんですね。

これは恐らく筆圧が弱い人ほど影響を受けやすく、全く気にならない人もいれば、はっきりと違和感を感じる人もいるようです。気がついたらいつもより力を入れていて、結果として手がつかれた…みたいなことにも繋がってきますし、合う合わないがハッキリ分かれそうです。

対策としては単純にオレンズネロに入れる芯を通常よりも濃くすることが考えられますが、0.3mmはともかく、0.2mmは専用芯のため選択余地がほとんどありません。
オートマチックの仕組み上どうしても避けることが出来ませんし、非常に悩ましいところです。

■私感
久しぶりに発売されるハイエンドシャープとあって、発売前から非常に楽しみにしていました。しかし、いざ発売日になってみると地元の文房具屋にはまったく入ってこず、入荷するのは都市型ホームセンターばかりという状態に。
話題性を優先したい向きがあるのは分かりますが、今回はちょっと露骨だったかなぁと。

…とまあそんな愚痴はさて置き、物自体は非常に良いものだと思います。3000円という限られた制約の中で、よくこれだけこだわった商品を開発できたな…というのが素直な感想です。0.2mmの極細芯をオートマチック機構に組み込むことは並大抵のことでは無いでしょう。ぺんてるの技術力の高さには驚くばかりです。

ただその一方で、クリップ周りの成型バリやロゴの傾き印字、塗装の弱さなど通常のぺんてる製品では見られないような甘さもあるのも現状で…。手作業での組み立てとのことで仕方ない部分もあるかもしれませんが、なんとか改善してもらいたい所です。

〔製品情報〕
ぺんてる オレンズネロ
品番:PP300x-A (x=芯径/0.3㎜=PP3003-A)
価格:3000円(税抜)
芯径:0.2/0.3㎜
重量:18g

3000円という価格に対して「高い」という声も散見しますが、今の時代でこれだけやれれば十分では無いでしょうか。質感に関してはやや物足りない気もしますが、造り自体は一線級だと思います。ただ、流石に転売店舗なんかから4000円も5000円も払う気はしないですけどね…。

そうそう、あくまでも聞いた話ではありますが、0.2mmと0.3mmを比較すると0.2mmのほうが引っかかりが少なく、書き心地が良いと感じる方が多いようです。芯の選択余地が狭まってしまいますが、どちらの芯径にするか迷った際は0.2mmを選んでみるのも良いかもしれませんね。

コメント

  1. くじらttt より:

    印字 0.2シルバー/0.3ゴールドと書かれていますが、逆だと思われます。それから0.2の方にはクリーナーピンが付いてましたよ。
    にしても品薄過ぎる・・・

    • monohashi より:

      >くじらtttさん

      コメントありがとうございます。
      印字の件、確かに誤っていました。ゴールド=0.2、シルバー=0.3に訂正しておきました。ご指摘ありがとうございます(_ _;)
      それから0.2mmのクリーナーピンについて。こちらは当記事が0.3に対する記事であること、それからオレンズ・メタルグリップにて同様のことを書いていたことから敢えて記載していませんでした。説明不足で申し訳ないですm(_ _)m こちらも適宜加筆しておきますね。

      品不足の件、中々解決しませんよね。地域によっては全く入荷してこないような感じで、歯がゆい気持ちをしている方も多いハズ…。年内中に収まると良いんですけど~。

  2. 二酸化炭素 より:

    最近、近くの小さな文具店で0.2が二本置いてあるのを、見かけました。あとどうでもいいですが、スマッシュのメタルレッドを買ったので紹介しときます..まあ、性能はいいですが、赤くなった軸は色ムラがクリップの所(軸の上辺り)にかなり目立っています。硬度表示の所も軸や硬度表示計に線がくっきり見えているため、自分はあまり、気に入りませんでした..

    • monohashi より:

      >二酸化炭素さん

      コメントありがとうございます。
      オレンズネロ、ようやく品が回り始めたんでしょうかね。早く誰でも購入できるような状態になって欲しいものです。

  3. ひのひさん より:

    オレンズネロ買えました
    東急ハンズに売ってました
    個人的にはスマッシュの方がつかいやすいです

    • monohashi より:

      コメントありがとうございます。
      単純な使用感のみを追い求めるのであれば、確かにガイドパイプ固定式のスマッシュの方が使いやすいかもしれませんね。

      • ひのひさん より:

        返信ありがとうございます
        すごく嬉しいです
        これからもブログ頑張ってください

  4. ●●●●●● より:

    オレンズネロ持ってます自分的には
    フォープロが好きです。
    だけど重心感がとても良くていいと思います。
    スマッシュも大好きっすねー

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